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3GPP TS23.501 5.7 Qos model を読んでいく

この記事は 3GPP TS23.501(V17.6.0)を読んでいく Advent Calendar 2022

の1日目の記事として執筆したものです。
その他の記事はQiitaのアドベントカレンダーページからどうぞ!

Calendar for 3GPP TS23.501(V17.6.0)を読んでいく | Advent Calendar 2022 - Qiita

[2022/12/2追記]
最終日の12/25には応用編として、実際のユースケースにあてはまるとどうなる?
を解説したいと思います。お楽しみに!

 

はじめに

一日目ということで本カレンダーの趣旨を簡単に紹介します。

5Gに関する仕様は3GPPで標準化され、公開されています。

中でも、全体アーキテクチャや手順を記載した下記が有名です。

  • TS23.501 System architecture for the 5G System (5GS) →5Gのアーキテクチャ
  • TS23.502 Procedures for the 5G System (5GS) →5Gにおける各種手順
  • TS38.300 NR and NG-RAN Overall Description →基地局・無線関連の概要

いずれも500ページを超えるような大長編かつ、概ね3ヶ月毎に改版されているため、これらを解説するような記事は、日本語英語問わず、現時点で私が知る限りありません。

#もしご存知でしたら教えてください...!

 

ということで、今回は基本の基本、5Gアーキテクチャの仕様であるTS23.501最新版をみんなで手分けして読み解いていきたいと思います!

サマリ

本記事では、本文を日本語訳しつつ重要な箇所をハイライト・解説していきますが、かなりの分量なので、以下のサマリを読むだけでもOKです。

  • 5GおけるQoS制御の最小粒度単位はQoSフローであり、QFIとよばれる識別子がついている
    • 1つのPDU Sessionの中に複数のQoSフローが存在している
  • QoSフローは大まかに2種類存在する
  • QoSフローはQoSプロファイルを持っていて、QoS制御を実施するためのQoSルールやQoSパラメータがそこには書かれている
    • QoSルール: どのパケットをどのQoSフローにマッピングするか、など
      • パケットはパケットフィルタセットを用いて識別する
    • QoSパラメータ:各QoSフローをどうやって優先度付け/分類するか、など
  • DL/ULでそれぞれQoSルールは異なっているが、DLのQoSルールからULのQoSルールを導出して適用する、Reflective QoSが導入された
  • 代表的なQoSパラメータは、「5QI」「ARP
    • 5QI:想定サービス毎に、パケットロス率・遅延目標等が標準化された指標
      • QoSフロー毎に設定し、QFIと同一の場合もある
    • ARP:QoSフロー間の優先度(輻輳時にリソースを横取りするか、等)
  • 通知制御は、1UEやPDUセッション毎のビットレート制限が可能
    • Session-AMBR:特定のPDUセッションの総ビットレートをUPFで制限する
    • UE-AMBR:各UEのすべてのPDUセッションの総ビットレートをRANで制限する
    • UE-slice-AMBR:各UEの特定のS-NSSAIを持つPDUセッションの総ビットレートをRANで制限する
      • UE-slice-AMBRのみGBR/non-GBRの両方を制限可能

 

5.7 QoS model

5.7.1.1 QoS flow

5G QoS モデルは、QoS フローに基づいています。 5G QoS モデルは、保証されたフロー ビット レートを必要とする GBR QoS フロー と、保証されたフロー ビット レートを必要としないnon-GBR QoS フロー の両方をサポートします。

5G QoS モデルは、Reflective QoS もサポートします (5.7.5 節を参照)。
QoS フローは、PDU セッションにおける QoS 差別化の最も細かい粒度です。

QoS フロー ID (QFI) は、5G システムでQoS フローを識別するために使用されます。 PDU セッション内で同じ QFI を持つユーザープレーントラフィックは、

同じトラフィック転送処理(スケジューリング、許可しきい値など) を受け取ります。 QFI は、N3(および N9)のカプセル化ヘッダーで伝送されます。つまり、E2Eの パケット ヘッダーは変更されません。 QFI は、すべての PDU セッション タイプに使用されます。


QFI は、PDU セッション内で一意でなければなりません。 QFI は動的に割り当てられるか、または 5QI と等しい場合があります (5.7.2.1 節を参照)。
5GS 内では、QoS フローは SMF によって制御され、PDU セッション確立手順 (TS 23.502 [3] の 4.3.2 節を参照)、または PDU セッション変更手順を介して、事前に構成または確立することができます。 

 

5.7.1.2 QoS プロファイル


QoS フローは、その QoS プロファイルに応じて「GBR」または「non- GBR」のいずれかになります。 QoS フローの QoS プロファイルは RANに送信され、以下で説明する QoS パラメータが含まれます (QoS パラメータの詳細は、5.7.2 節で説明します)

 

QoS フローについて、QoS プロファイルには QoS パラメータが含まれます。
- 5G QoS 識別子 (5QI)
- 割り当てと保持の優先順位 (ARP)

各non-GBR QoS フローに対してのみ、QoS プロファイルには 下記QoS パラメータも含まれる場合があります。
-  Reflective QoS 属性 (RQA)

各 GBR QoS フローに対してのみ、QoS プロファイルには 下記QoS パラメータも含まれます。
- 保証フロー ビット レート (GFBR)

- 最大フロー ビット レート (MFBR)

GBR QoS フローのみの場合、QoS プロファイルには下記QoS パラメータも含まれる場合があります。
- 通知制御
- 最大パケット損失率※
※このリリースの仕様では、最大パケット損失率は、音声メディアに属する GBR QoS フローに対してのみ提供されます。


QoS プロファイルには、QoS プロファイル自体には含まれていない、対応する 1 つの QoS フロー識別子 (QFI) があります。
QoS フローに動的に割り当てられた 5QI を使用するには、さらに QoS プロファイルの一部として完全な 5G QoS 特性 (5.7.3 節で説明) のシグナリングが必要です。
標準化または事前構成された 5QI が QoS フローに使用される場合、5G QoS 特性の一部が QoS プロファイルの一部として通知される場合があります (5.7.3 節で説明)。

5.7.1.2a Alternative QoS Profileは省略

5.7.1.3 QoS フローの制御


QoS フローを制御するために、次のオプションがサポートされています。
1. non-GBR QoS フローの場合、標準化された 5QI または事前設定された 5QI が使用され、5QIがQFI の範囲内 (つまり、64 未満の値) の場合、 5QI値はQFIとして使われる場合があります。

 (a) デフォルトの ARP は、RAN で事前に構成されます。また
 (b) ARP と QFI は、PDU セッションの確立時または PDU セッションの変更時、および   PDU セッションのユーザー プレーンがアクティブ化されるたびに、N2を介して   RAN に送信されるものとします。

2. 他のすべてのケース (GBR およびnon-GBR QoS フローを含む) では、動的に割り当てられた QFI が使用されます。
5QI 値は、標準化されていて、事前に構成されている、または動的に割り当てられている場合があります。

QoS プロファイルと QoS フローの QFI は、PDU セッションの確立/変更時、および NG-RAN が使用されるときに、PDU セッションのユーザー プレーンがアクティブ化されるたびに、N2 を介して RAN に提供されます。
1.(b) と 2. のみが 3GPP-RAN に適用されます。1.(a)、1.(b)および 2. は、non- 3GPP アクセスに適用される場合があります。

5.7.1.4 QoS ルール


UE は、QoS ルールに基づいて、UL ユーザープレーントラフィックの分類とマーキング、つまり、UL トラフィックQoS フローへの関連付けを実行します。

これらの QoS ルールは、UE に明示的に提供される場合があります。 (つまり、PDU セッション確立/変更手順を使用して明示的にシグナリングされた QoS ルール)、UE で事前に構成されているか、またはReflective QoS を適用することによって UE によって暗黙的に導出されます (5.7.5 節を参照)。

QoS ルールには、関連する QoS フローのQFI、パケット フィルタ セット (5.7.6 節を参照)、および優先値 (5.7.1.9 節を参照) が含まれます。明示的に通知された
QoS ルールには、PDU セッション内で一意であり、SMF によって生成される QoS ルール識別子が含まれています。
同じ QoS フロー (つまり、同じ QFI) に関連付けられた複数の QoS ルールが存在する場合があります。


デフォルトの QoS ルールは、PDU セッションの確立ごとに UE に送信する必要があり、QoS フローに関連付けられています。 IP タイプの PDU セッションまたはイーサネット タイプの PDU セッションの場合、デフォルトの QoS ルールは、パケットフィルタを含む可能性がある PDU セッションの唯一の QoS ルールです。 すべての UL パケットを許可するように設定します。この場合、最高の優先順位の値が QoS ルールに使用されます。
UE が QoS ルールのパケット フィルタ セットに対して UL パケットを評価する方法は、5.7.1.5 節で説明されています。


デフォルト QoS ルールにパケット フィルタ セットが含まれていないか、すべての UL パケットを許可するパケット フィルタ セットが含まれている限り、デフォルト QoS ルールが関連付けられている QoS フローにReflective QoS を適用してはいけません。


5.7.1.5 QoS フロー マッピング


SMF は、QoS およびサービス要件に基づいて、PCC ルールを QoS フローに紐づけます。 SMF は、新しい QoS フローに QFI を割り当て、QoSプロファイルが紐づきます。

具体的には、対応する UPF への命令および QoS ルールを、QoS フローに紐づけされたPCC ルールおよび PCF によって提供されるその他情報から取得します。


該当する場合、SMF は QoS フローに関する次の情報をRAN に提供します。
- QFI
- QoS プロファイル(5.7.1.2 で説明 )
- (オプション) 代替 QoS プロファイル


QoS フローに紐づけされた各 PCC ルールについて、SMF は次の情報を UPF に提供し、ユーザープレーントラフィックの分類、帯域幅の適用、およびマーキングを有効にします (詳細は 5.8 節で説明されています)。
- SDF テンプレートの DL 部分を含む DL PDR;
- SDF テンプレートの UL 部分を含む UL PDR;

※SDF=Service Data Flow , PDR=Packet Detection Rule

- 対応するパケット マーキング情報 (例: QFIトランスポートレベルマーキング値 (例: 外部 IP ヘッダーの DSCP 値)

 

QoS フローに紐づけされた各 PCC ルールについて、該当する場合、SMF は次の原則に従って明示的にシグナリングされたQoS ルール (5.7.1.4 節を参照) を生成し、追加オペレーションとともに UE に提供します。
- (PDU セッションに対して) 一意の QoS ルール識別子が割り当てられます。
- QoS ルールの QFI は、PCC ルールが紐づけされている QoS フローの QFI に設定されます。
- QoS ルールのパケット フィルタ セットは、UL SDF フィルタと、オプションで PCC ルールの DL SDF フィルタから生成されます
- QoS ルール優先値は、QoS ルールが生成される PCC ルールの優先値に設定されます。
- 動的に割り当てられた QFI の場合、QoS フローに関連付けられた QoS ルールに加えて、QoS フロー レベルの QoS パラメータ (たとえば、5QI、GFBR、MFBR) が UE に通知されます。


ユーザー プレーン トラフィックの分類とマーキング、および QoS フローの RAN リソースへのマッピングを図 5.7.1.5-1 に示します。

QoSフローのRANリソースへのマッピング

DL では、着信データは、DL PDR のパケットフィルタ セットに基づいて UPF によって優先順位に従って分類されます (追加の N4 シグナリングを開始することはありません)。 UPF は、QFI を使用して N3 (および N9) ユーザープレーンマーキングを介して、QoS フローに属するユーザー プレーントラフィックの分類を伝達します。

RAN は、QoS フローを RANリソース (つまり、3GPP RAN の場合のデータ無線ベアラー) に紐づけます。QoS フローと RAN リソースの間に厳密な 1:1 の関係はありません。 QoS フローをマッピングできる必要な RAN リソースを確立し、それらを解放するのは、RAN 次第です。 RAN は、QoS フローがマッピングされている AN リソースが解放された時点を SMF に通知する必要があります。一致する DL PDR が見つからない場合、 UPFはDLデータ パケットを破棄します。

ULでは、
- IP またはイーサネットの PDU セッションの場合、UE は、一致する QoS ルール (つまり、そのパケットフィルターが UL パケットに一致する) が見つかるまで、ULパケットを評価します。
- 一致する QoS ルールが見つからない場合、UE は UL データ パケットを破棄する必要があります。
UE は、対応する一致する QoS ルールの QFI を使用して、UL パケットを QoS フローに紐づけます。次に、UE は QoS フローを RAN リソースに紐づけます。 

5.7.1.6 DL トラフィック


DL トラフィックの処理には、次の特性が適用されます。
- UPF は、PDR に基づいてユーザー プレーン トラフィックQoS フローに紐づけます。
- UPF は、5.7.1.8 節で指定されているように Session-AMBR enforcementを実行し、課金のためのパケットカウントを実行します。
- UPF は、5GC と RAN の間の単一のトンネルで PDU セッションの PDU を送信します。UPF は、カプセル化ヘッダーに QFI を含めます。さらに、UPF は、カプセル化ヘッダーにReflective QoS 有効化の指示を含めることができます。
- UPF は、QoS フローごとに DL でトランスポート レベルのパケット マーキングを実行します。 UPF は、SMF によって提供されるトランスポート レベルのパケット マーキング値を使用します (5.8.2.7 節で説明)。
- RAN は、QFI および関連する 5G QoS プロファイルに基づいて、QoS フローからの PDU をアクセス網のリソースに紐づけし、DL パケットに関連する N3 トンネルも考慮します。


5.7.1.7 UL トラフィック


UL トラフィックの処理には、次の特性が適用されます。
- UE は、格納された QoS ルールを使用して、UL ユーザープレーントラフィックQoS フローの間のマッピングを決定します。 UE は、一致するパケット フィルタを含む QoS ルールの QFI で UL PDU をマークし、RAN によって提供されるマッピングに基づいて、QoS フローの対応するアクセス網のリソースを使用して UL PDU を送信します。

- RAN は、UPF に向けて N3 トンネルを介して PDU を送信します。 RAN から CN に UL パケットを渡すとき、RAN は UL PDU のカプセル化ヘッダーに QFI 値を含め、N3 トンネルを選択します。
- RAN は、5QI、プライオリティ レベル (明示的にシグナリングされた場合)、および関連する ARP プライオリティレベルに基づいて決定されるトランスポート レベル パケット マーキング値を使用して、QoS フローごとに UL でトランスポートレベル パケット マーキングを実行します。
- UPF は、UL PDU 内の QFI が UE に提供された QoS ルールと一致しているか、またはReflective QoS の場合はUE によって暗黙的に導出されているかどうかを評価します。
- UPF と UE は、5.7.1.8 節で指定されているように Session-AMBR enforcementを実行し、UPF は課金のためにパケットのカウントを実行します。


5.7.1.8 AMBR/MFBR の実施とレート制限

※AMBR=Aggregated Maximum Bit Rate , MFBR=Maximum Flow Bit Rate

UPF が SMF から Session-AMBR 値を受信した場合、UL および DL Session-AMBRは UPF によって実施されるものとします。

UL Classifier PDU セッションの場合、UL および DL Session-AMBRは、UL Classifier 機能をサポートするSMF において選択されたUPF で実施されるものとします。さらに、DL Session- AMBR は、N6を終端するすべての UPF で個別に実施されます(つまり、UPF 間の相互作用を必要としません) 


マルチホーム PDU セッションの場合、UL および DL Session-AMBR は、分岐点機能をサポートするUPF で実施されるものとします。 さらに、 DL Session-AMBR は、N6を終端するすべての UPF で個別に実施されるものとします (つまり、UPF 間の相互作用を必要とせずに) 
※DL Session-AMBR は、N6 を終端するすべての UPF で実施され、UL Classifier/分岐点機能を実行する UPF によって破棄される可能性のあるトラフィックの不要な転送を減らします。 DL Session-AMBR  UL Classifier/Branching Point で DL パケットを破棄すると、課金をサポートする際に、誤ったカウントが発生する可能性があります。
RANは、non-GBR QoS フローの UE ごとに、UL および DL で UE-AMBRを実施します。


UE は、Session-AMBR を受信した場合、Session-AMBR を使用して、Non-GBR トラフィックの PDU セッション単位でUL レート制限を実行する必要があります。


QoS ルールの優先順位の値と PDR の優先順位の値は、それぞれ QoS ルールまたは PDR が評価される優先度を決定し、優先度が高いものから実行されます。


5.7.1.10 UE-Slice-MBR の実施とレート制限


RAN が AMF から S-NSSAI の UE-Slice-MBR を UE に対して受信した場合、RAN はその UE のすべての PDU セッションにこの UE-Slice-MBR を適用する必要があります。

特に、RAN はこの UE-Slice-MBR を次のように実施します。


1. GBR QoS フローの確立または変更の要求が受信されるたびに、RAN アドミッション コントロールは、許可された GBR QoS フローの GFBR 値の合計が UE-Slice-MBR を超えないことを保証する必要があります。許可できない場合、RAN は QoS フローの確立/変更を拒否するものとします。

2. RAN は、PDU セッションに属するすべての GBR およびnon-GBR QoS フローにわたる集約されたビットレートが UE-Slice-MBR を超えないことを保証するものとします。

5.7.1.11 QoS aspects of home-routed roamingは省略

5.7.2 5G QoS パラメータ

QoSパラメータ表の一部


5.7.2.1 5QI


5QI は、 QoS フローの QoS 転送処理を制御するノードのパラメータに適用されます (例: 重みのスケジューリング、許可しきい値、キュー管理しきい値、リンク層プロトコル設定など)
標準化された 5QI 値は、QoSパラメータ表で指定されているように、5G QoS 特性の標準化された組み合わせに1対1でマッピングされます。

事前設定された 5QI 値の 5G QoS 特性は、RAN で事前設定されます。
標準化または事前構成された 5G QoS 特性は、5QI 値によって示され、変更手順が実施されない限り、どのインタフェースでも通知されません。

 

5QI が動的に割り当てられた QoS フローの 5G QoS 特性は、QoS プロファイルの一部として通知されます。
※N3 では、各 PDU セッション は、カプセル化ヘッダーで運ばれる QFI を介して 1 つの 5QI に関連付けられます。


5.7.2.2 ARP


QoS パラメータ ARP には、優先レベル、プリエンプション機能、およびプリエンプション脆弱性に関する情報が含まれています。これにより、QoS フローの確立/変更/ハンドオーバーを受け入れるか、またはリソースが制限された場合に拒否する必要がある
かを決定できます (通常、GBR トラフィックのアドミッション制御に使用されます)。

また、リソース制限中にどの既存の QoS フローを横取りするか、つまりリソースを解放するためにどの QoS フローを解放するかを決定するためにも使用できます。


ARP優先度は、QoS フローの相対的な重要性を定義します。 ARP プライオリティ レベルの範囲は 1 ~ 15 で、1 が最高プライオリティです。
ARP優先度 1 ~ 8 は、オペレータ ドメイン内で優先処理を受けることが許可されているサービスの QoS フローにのみ割り当てる必要があります。

ARP優先度9 ~15 は、サービスの QoS フローに割り当てられます。

このサービスは、ホーム ネットワークによって承認され、したがって UE がロー
ミングしているときも適用されます。

注: これにより、将来のリリースで ARP 優先度レベル 1 ~ 8 を使用して、下位互換性のある方法でオペレータ ドメイン内の緊急サービスや、その他の優先サービスなどを示すことができるようになります。これは、優先度レベルの互換性のある使用を保証する適切なローミング協定が存在する場合、ローミング状況での ARP 優先度レベル 1 ~ 8 の使用を妨げるものではありません。


ARP プリエンプション機能は、優先度の低い別の QoS フローにすでに割り当てられているリソースを QoS フローが取得できるかどうかを定義します。

ARP プリエンプションの脆弱性は、優先度の高い QoS フローを許可するために、QoS フローが割り当てられたリソースを失う可能性があるかどうかを定義します。

ARP プリエンプション機能と ARP プリエンプションの脆弱性は、「有効」または「無効」に設定する必要があります。
デフォルトの QoS ルールが関連付けられている QoS フローの ARP プリエンプションの脆弱性を適切に設定して、この QoS フローのリリースのリスクを最小限に抑える必要があります。

5.7.2.3 RQA


Reflective QoS 属性 (RQA) は、この QoS フローで伝送される特定のトラフィック (必ずしもすべてではない) がReflective QoS の対象であることを示すオプションのパラメーターです。 RQA が QoS フローに対してシグナリングされた場合にのみ、RAN は、
この QoS フローに対応する RAN リソースの RQI(Reflective QoS Indicator) の転送を有効にします。 RQA は、NG-RAN での UE コンテキストの確立時、および QoS フローの確立/変更時に、N2 を介して NG-RAN にシグナリングされます。


5.7.2.4 通知制御
5.7.2.4.1 一般


QoS パラメータ通知制御は、QoS フローの存続期間中に QoS フローの「GFBR を保証できなくなった (または再び保証できる)」場合に、NG-RAN から通知を要求するかどうかを示します。アプリケーション トラフィックQoS の変更に適応できる場合 (たとえば、レート適応をトリガーできる場合)、GBR QoS フローに通知制御を使用できます。
SMF は、QoS フローに紐づけされた PCC ルール (PCF から受信) に QoS 通知制御パラメータが設定されている場合にのみ、通知制御を有効にします。通知制御パラメータは、QoS プロファイルの一部として NG-RAN に通知されます。 

 

5.7.2.5 フロー ビット レート


GBR QoS フローの場合のみ、次の追加の QoS パラメータが存在します。
- 保証フロー ビット レート (GFBR) 
- 最大フロー ビット レート (MFBR)
GFBR は、平均時間にわたってネットワークによって QoS フローに提供されることが保証されているビット レートを示します。 MFBR は、ビット レートを QoS フローで期待される最高ビット レートに制限します (たとえば、過剰なトラフィックは、UE、RAN、UPF でのシェーピングまたはポリシング機能によって破棄または遅延される可能性があります)。

GFBR 値を超えて MFBR 値までのビット レートには、QoS フローの優先度レベルによって決定される相対的な優先度が提供される場合があります。
GFBR と MFBR は、QoS プロファイルでRAN に通知され、個々の QoS フローごとに QoS フロー レベル QoS パラメータとして UE に通知されます。
※GFBR は、サービスが存続する最低許容サービスビットレートとして推奨されます。
※ネットワークは、特定の QoS フローの MFBR を、オペレータ ポリシーとアプリケーション/サービス レベルでのレート適応のサポートに基づいて、GFBR よりも大きく設定できます。


5.7.2.6 集約ビットレート


各PDUセッションは、次の集約レート制限QoS パラメータに関連付けられています。
- セッションごとの総最大ビット レート (Session-AMBR)

Session-AMBRは、UPFに通知され、特定の PDU セッションのすべてのnon-GBR QoS フローの総ビット レートを制限します。Session-AMBR は、標準化された値である AMBR 平均ウィンドウで測定されます。 Session-AMBR は、GBR QoS フローには適用されません。


各UEは、次のレート制限QoS パラメータに関連付けられています。
- UE集約最大ビット レート (UE-AMBR) 
UE-AMBR は、UE のすべてのnon-GBR QoS フローで提供されると予想される総ビット レートを制限します。各RAN は、その UE-AMBR を設定する必要があります。

アクティブなユーザープレーンを持つすべてのPDU セッションのSession-AMBR の合計はUE-AMBRに設定されます。 UE-AMBR は、UDM もしくはPCFから取得され、AMF によって RAN に提供されるパラメータです 。 AMF は、PCF によって提供された UE-AMBR をRAN に提供します。 UE-AMBR は、標準化された値である AMBR 平均化ウィンドウで測定されます。 UE-AMBR は GBR QoS フローには適用されません。

 

各UEの、同じスライス (S-NSSAI) に対するの PDU セッションの各グループは、次の集約レート制限 QoS パラメータに関連付けることができます。
- スライス最大ビット レート (UE-Slice-MBR


UE-Slice-MBR は、アクティブなユーザー プレーンを持つ同じスライス (S-NSSAI) の UE の PDU セッションに対応する、すべての GBR およびnon-GBR QoS フローの総ビット レートを制限します。 UE-Slice-MBR は、標準化された値である AMBR 平均ウィンド
ウで測定されます。 


5.7.2.7 デフォルト値


PDU セッション設定ごとに、SMF はSession-AMBR 、5QI および ARP のデフォルト値をUDM から取得します。デフォルトの 5QI 値は、標準化された値の範囲からのnon-GBR 5QI でなければなりません。
デフォルトの QoS ルールに関連付けられた QoS フロー以外の PDU セッションの QoS フローの場合、SMF は、ARP 優先度レベル、ARP プリエンプション機能、および ARP プリエンプション脆弱性を、それぞれの値に設定する必要があります。

動的 PCC が展開されていない場合、SMF は DNN ベースの構成を持つことができ、デフォルトの QoS ルールに関連付けられた QoS フローとして GBR QoS フローを確立できます。


5.7.2.8 最大パケット損失率

最大パケット損失率 (UL/DL) は、アップリンクおよびダウンリンク方向で許容できる QoS フローの損失パケットの最大率を示します。これは、GFBR に準拠しているQoS フローに提供されます。
※この仕様のリリースでは、最大パケット損失率 は、音声メディアに属する GBR QoS フローに対してのみ提供できます。

5.7.3 5G QoS 特性


5.7.3.1 一般


この節は、5QI に関連する 5G QoS 特性を指定します。特性は、QoS フローが UE と UPF の間でE2Eで受信するパケット転送処理における、次のパフォーマンス観点を含みます。

 

1.リソースタイプ (non-GBR、GBR、遅延クリティカル GBR)。
2.優先レベル
3.パケット遅延バジェット (コア ネットワーク パケット遅延バジェットを含む)
4.パケットエラー率
5.平均化ウィンドウ( GBR および遅延クリティカル GBR のみ)
6.最大データ バースト ボリューム (遅延クリティカルGBRのみ)


5G QoS 特性は、3GPP 無線アクセスリンク層プロトコルなど、各 QoS フローのノード固有のパラメーターを設定するためのガイドラインとして理解する必要があります。

 

標準化または事前構成された 5G QoS 特性は、5QI 値によって示され、特定の 5G QoS 特性が変更されない限り、どのインタフェースでも通知されません。 
※デフォルト値が指定されていないため、事前設定された 5G QoS 特性には、上記のすべての特性が含まれている必要があります。


5.7.3.2 リソースタイプ


リソース タイプは、QoS フローレベル保証フロー ビット レート (GFBR) 値に関連する専用ネットワーク リソースが 永続的に割り当てられるかどうかを決定します(たとえば、基地局のアドミッション制御機能によって)


GBR QoS フローは通常、動的なポリシーと課金制御を必要とする「オンデマンド」で承認されます。 GBR QoS フローは、GBR リソース タイプまたは遅延クリティカル GBR リソース タイプのいずれかを使用します。 

non-GBR QoS フローは、静的ポリシーと課金制御によって事前に承認される場合があります。non-GBR QoS フローは、non-GBR リソース タイプのみを使用します。

 

5.7.3.3 優先度


5G QoS 特性に関連付けられた優先度レベルは、QoS フロー間でリソースをスケジューリングする際の優先度を示します。
優先度レベルは、同じ UE の QoS フローを区別するために使用され、異なる UE からの QoS フローを区別するためにも使用されます。
輻輳の場合、1 つ以上の QoS フローに対してすべての QoS 要件を満たすことができない場合、優先度レベルを使用して、優先度レベル値 N の QoS フローが優先されるように、どの QoS フローに対して QoS 要件が優先されるかを選択する必要があります。

より高いプライオリティ レベル値を持つ QoS フロー (つまり、N+1、N+2 など)。輻輳がない場合は、優先度レベルを使用して QoS フロー間のリソース配分を定義する必要があります。さらに、スケジューラは、アプリケーションのパフォーマンスとネットワーク容量を最適化するために、他のパラメータ (リソース タイプ、無線状態など) に基づいて QoS フローに優先順位を付けることができます。
すべての標準化された 5QI は、QoS 特性表 5.7.4.1 で指定された優先度レベルのデフォルト値に関連付けられています。
優先度レベルは、標準化された 5QI とともにRAN に通知することもできます。受信した場合は、デフォルト値の代わりに使用されます。

優先度レベルは、事前設定された 5QI と一緒にRAN に通知することもできます。受信した場合は、事前設定された値の代わりに使用されます。


5.7.3.4 パケット遅延バジェット


UPFで UE と N6 の間でパケットが遅延する可能性がある時間の上限を定義します。 PDB(Packet Delay Budget) は、UPF が N6を介して受信する DL パケットと、UE が送信する UL パケットに適用されます。特定の 5QI では、PDB の値は UL と DL で同じです。 3GPP アクセスの場合、PDB は、スケジューリングおよびリンク層機能の構成をサポートするために使用されます (たとえば、スケジューリング優先度の重みと HARQの設定)。


5.7.3.5 パケット エラー率


Packet Error Rate (PER) は、リンク層プロトコル (3GPP アクセスの RAN 内の RLC など) の送信者によって処理されたが、上位層への対応する受信機 (例: 3GPP アクセスの RAN における PDCP)に正常に配信されなかった PDU (IP パケットなど) のレートの上限を定義します。

したがって、PER は、非輻輳関連のパケット損失率の上限を定義します。 PER の
目的は、適切なリンク層プロトコル構成 (たとえば、3GPP アクセスの RAN における RLC および HARQ) を可能にすることです。 5QI ごとに、PER の値は UL と DL で同じです。

 

5.7.3.6 アベレージング ウィンドウ


各 GBR QoS フローは、平均化ウィンドウに関連付けられます。平均化ウィンドウは、GFBR と MFBR が計算される期間を表します。
すべての標準化された 5QI (GBR および遅延クリティカル GBR リソース タイプの) は、平均化ウィンドウのデフォルト値に関連付けられています。平均化ウィンドウは、標準化された 5QI とともにRAN および UPF に通知することもでき、受信した場合は、デフォルト値の代わりに使用されます。

 

5.7.3.7 最大データ バースト ボリューム


遅延が重要なリソース タイプを持つ各 GBR QoS フローは、最大データバースト ボリュームに関連付けられます。
Maximum Data Burst Volume (MDBV)は、PDB の期間内にサービスを提供するために必要な最大量のデータを示します。
すべての標準化された 5QI は、MDBV のデフォルト値に関連付けられていて、受信した場合は、デフォルト値の代わりに使用されます。

 

5.7.5 Reflective QoS


5.7.5.1 一般


Reflective QoS により、UE はSMF が提供する QoS ルールなしで UL ユーザー プレーン トラフィックQoS フローにマッピングでき、 IP PDU セッションおよびイーサネット PDU セッションに適用されます。これは、受信した DL トラフィックに基づいて UE で UE 派生的な QoS ルールを作成することによって実現されます。

Reflective QoS と non-Reflective QoS を同じ PDU セッション内で同時に適用することが可能です。
Reflective QoS 機能をサポートする UE の場合、UE は、受信した DL トラフィックに基づいてULトラフィック用に UE 派生 QoS ルールを作成する必要があります。 UE は、UE が作成した QoS ルールを使用して、UL トラフィックQoS フローへのマッピングを決定します。

 

5.7.5.2 UE派生QoSルール


UE 派生 QoS ルールには、次のパラメータが含まれます。
- 1 つの UL パケット フィルタ 
- QFI
- 優先度
DL パケットを受信すると、受信した DL パケットから導出された 1 つの UL パケット フィルタを使用して、PDU セッション内の UE派生 QoS ルールを導出します。

DLパケットに基づいて次のように導出されます。
- プロトコル ID / 次のヘッダーが TCP または UDP に設定されている場合は、送信元と宛先の IP アドレス、送信元と宛先のポート番号、およびプロトコル ID / nextヘッダー フィールドを使用します。

- Protocol ID / Next Header が UDP に設定されている場合、受信した DL パケットが UDP カプセル化されたIPSec保護パケットである場合、送信元および宛先 IP アドレス、送信元および宛先ポート番号など

UE 派生 QoS ルールの QFI は、DL パケットで受信した値に設定されます。

 

5.7.5.3 Reflective QoS 制御


Refelective QoS は、N3 (および N9) のカプセル化ヘッダーの RQI を QFI と一緒に使用し、Reflective QoS タイマー (RQ タイマー) 値と一緒に使用することで、パケット単位で制御されます。 PDU セッション確立時に UE に送信するか、デフォルト値に設定します。コアネットワークによって提供される RQ タイマー値は、PDU セッション単位の粒度です。

UPF が SMF から RQI マーキングを適用するように指示された場合、UPF は、この SDF に対応するすべての DL パケットの N3 (または N9) のカプセル化ヘッダーに RQI を設定する必要があります。RQI が N3の DL パケットでRAN によって受信されると、RAN はその DL パケットの QFI と RQI を UE に通知する必要があります。
RQI 付きの DL パケットを受信すると、次のようになります。
・DL パケットに対応するパケット フィルタを持つ UE 派生 QoS ルールがまだ存在しない場合
 - UE は、DL パケットに対応するパケット フィルタを使用して、新しい UE 派生 QoS ルールを作成する必要があります

- UE は、この UE 派生 QoS ルールのために、RQ タイマー値に設定されたタイマーを開始する必要があります。

・ DL パケットに対応するパケットフィルタを持つ UE 派生 QoS ルールが存在する場合
 - UE は、この UE から導出された QoS ルールに関連付けられたタイマーを再起動する必要があります。
 - DLパケットに関連付けられた QFI が、UE から派生した QoS ルールに関連付けられた QFI と異なる場合、UE は、この UE から派生した QoS ルールを新しい QFI で更新する必要があります。

UE 派生 QoS ルールに関連付けられたタイマーが満了すると、UE は、対応する UE 派生 QoS ルールを削除します。


5.7.6 パケット フィルタ セット


5.7.6.1 一般


パケット フィルタ セットは、QoS ルールと PDR で使用され、1 つまたは複数のパケット (IP またはイーサネット) フローを識別します。

パケット フィルタ セットには、1 つまたは複数のパケット フィルタが含まれる場合があります。すべてのパケット フィルタは、DL 方向、UL 方向、または両方向に適用できます。

PDU セッション タイプに対応して、IP パケット フィルタ セットとイーサネット パケット フィルタ セットの 2 種類のパケット フィルタ セットがあります。


5.7.6.2 IP パケット フィルタ セット


IP PDU セッション タイプの場合、パケット フィルタ セットは、少なくとも以下の任意の組み合わせに基づいてパケットフィルタをサポートする必要があります。
- 送信元/宛先 IP アドレスまたは IPv6 プレフィックス
- 送信元/宛先ポート番号
- IP/Next ヘッダー タイプの上のプロトコルプロトコル ID。
TOS (IPv4) / Traffic class and mask (IPv6
- フロー ラベル (IPv6)。
- セキュリティ パラメータ インデックス
- パケット フィルター方向