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3GPP Workshop (RAN) メモ

 

 

この記事は、2023/6/15-16@Taipeiで行われるRAN-Release 19 workshopに関する個人的メモです。

https://portal.3gpp.org/Home.aspx#/meeting?MtgId=60517

[2023/6/2 追記修正]

 

 

Workshopって?

定期開催のPlenaryやWGとは別に、アドホックで行われるミーティングであり、前回のRel-18 Workshopは2021年に開催されました。その前は2016年にもWorkshopという名前ではありませんが、5Gに向けたアドホックミーティングが行われていたようです。

RANのアドホック開催履歴
どういう位置づけなの?

下記はSAのRelease Planningなので、厳密にはRANと異なるかもしれませんが、

次のReleaseの議論を開始するにあたり、おおよそ1クォーターを3ヶ月として

1Q → Workshopで各社の展望を語りつつ、テーマを絞り込む

2Q → Releaseのテーマを決定する

3Q → テーマをWI/SIに落とし込んで決定

4Q→ WI/SI 議論開始

のようにすすめていくようです。

SAのPlanning Timeline [SP-220965]

ちなみに、最新のRAN Plenary #99 (2023/3)で提案されているTimelineに今回のRel-19 Workshopをプロットしたのが下記となります。2Q終わりに開催し、翌年の1Qおよび2QにはRel-19の議論開始とされているので、おおよそ上記でみたSAのPlanningと一致しているように見えます。

RAN Planning [RP-230050]
何を議論するの?

次のReleaseや世代に期待すること、キーワードを各社が思い思いに語ります。

ただし、Rel-18 Workshopの際は、5G-Adcancedという冠詞もあったことから、下記3つの大枠のテーマは予め決められていました。

  1. eMBB driven : さらにスループット向上するぞ!の検討
  2. non-eMBB driven : VR,ドローン,産業用ネットワークへの5G適用だ!の検討
  3. Cross-Functionality : AI/MLを無線制御に適用したり、省電力化の検討

これらのテーマ毎に検討項目が議論され、最終的なアウトプットとしては下記のような

リストが作成され、これをもとにしたRel-18のSI/WIがその後議論されています。

 

 

項目

概要

1

Evolution for downlink MIMO

参照信号の拡張、ビームフォーミングのマルチ化、CPE向け強化

2

Uplink enhancements

4送信(MIMO)以上への拡張、カバレッジの拡張

3

Mobility enhancements

L1/L2レベルでのセル間ハンドオーバー、FR2利用促進に向けた仕様拡張

4

Additional topological improvements

IAB(Integrated Access Backhaul)拡張 、スマートレピータ実現

5

Enhancements for XR (eXtended Reality)

XRへの適用に向けたKPI/QoSの定義

6

Sidelink enhancements

車車間通信拡張、リレー通信への拡張、LTEとNR共存下でのV2X

7

RedCap evolution

新たなユースケースやあらたな帯域幅検討(5MHz幅)

8

NTN (Non-Terrestrial Networks) evolution

NRとIoT観点の両方をさらに検討

9

Evolution for broadcast and multicast services

LTEをベースとした5GブロードキャストおよびNRのみの両方をさらに検討

10

Expanded and improved Positioning

車車間での測位範囲・精度・電力効率の改善 Redcapでの測位検討

11

Evolution of duplex operation

周波数分割方法のシナリオ検討、干渉管理

12

AI /ML (Machine Learning),

RAN領域への適用検討

13

Network energy savings

KPIや評価基準の検討やフォーカス範囲・解決案の検討

 

Rel-19 はどうなんだ!?

6/15-16の開催に向け、下記に寄書がアップロードされています。

https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_AHs/2023_06_RAN_Rel19_WS/Docs

今回は、Rel-18のときほど規模は大きくはなさそうですが、それでも400以上の寄書が予定されています(Rel-18は約600程度)

以下、すでにアップロードされている寄書の中からいくつか抜粋していきます。

 

Overview of ITU-R 6G Timeline 

こちらは、Rel-19の全体的な位置づけと6Gに向けた今後の見通しに関してです。

6GがIMT-2030で2030年頃に勧告されると想定すると、Rel-19ではまだ検討はされないものの、Rel-20では6GのSI検討を開始すべき、としています

RWS-230091:H3C

RWS-230012:NOKIA

ちなみに、Rel-18 Workshopでも同じような今後の見通しは議論されていました。

こちらでもRel-20から6G のSI検討とされているので、おおよそこのようなスケジュールを各社検討しているのかもしれません。

RWS-210329:Ericsson

 

Rel-19 Key Topic

各社がRel-19としてKey Topic/Itemとして考えている一覧を列挙していきます。

RWS-230070:KDDI

RWS-230282:ZTE

RWS-230012:NOKIA

 

Regenerative NTN gNB DU payload 

こちらは、下記記事でも取り扱いましたが、gNBの全部もしくは一部が衛星に搭載された、再生中継型に関する議論となります。

TR38.821 Solutions for NR to support NTNを読む (8.3章 Mobility) - omusubi techblog

 

下記寄書では、Rel-17,18では透過型が主に議論されており再生中継型についても、Rel-19から議論を開始すべきとしています。また、TNとNTNのマルチコネクティビティや、CUPS/MECによるNTNに適したような機能分離/配置の実現に向けた、F1/E1プロトコルの拡張が必要であるとしています。

RWS-230045:Lockheed Martin他

その他、衛星間通信を含めた場合に、IABライクな再生中継型の実現についても提案されています。

RWS-230050:VERANA
UE UL physical aggregation

こちらは、各送電鉄塔の両端に設置される送電線保護リレー用通信回線(電圧を常に監視し、以上があれば瞬時に切り離す)に用いる複数本の光ファイバーを、コスト削減のために無線に置き換えられるよう、複数端末で同じULリソース/データを共有するような仕組みを提案しています。これにより、複数の光ファイバーを敷設するのと同等の信頼性を実現しようとしているようです。

RWS-230096:H3C
TDD full duplex enhancement

こちらは、Rel-18で検討されているFull Duplex関連の寄書となります。

特にTDDにおいてULの送信待ち時間を減らすため、すべてのSlotにUL/DLをそれぞれ配置し、基地局は全2重、端末は半二重とするSBFD(Sub-Band Full Duplex)について、実現に向けたシグナリングや手順のさらなる検討を提案しています。

RWS-230092:H3C

SBFDのイメージ
(https://www.microwavejournal.com/articles/37607-boosting-5g-network-performance-using-self-interference-cancellation)

また、上記の実現に向けては、特に基地局側の高い自己干渉除去機能(送信部→受信部への干渉)が必須となります。

RAN Slicing

下記記事でも何度か取り上げたのことのあるRAN Slicingに関する拡張です。

TR38.832 Study on enhancement of RAN slicing を読む [前編] - omusubi techblog

スライスに基づくRACH partitioningがRel-17で仕様化されましたが、こちらは端末から発生するトラフィック(=Mobile Oriented/Originated)のみがサポート対象となっていました。

こちらを、端末に向けたトラフィック(=Mobile Terminated)にも適用しようという、割と単純な拡張提案です。併せてpagingに関する適用も提案されています。

また、キャンプオンしているセルがRANスライシングに対応していない場合に、どのように対応セルに移行するか手順の検討が必要であると提案しています。

RWS-230089:Xiaomi

 

 

 

Home gNB /Network Controlled Access Point

ミリ波の普及に向けた、いわゆるミリ波フェムトセルの提案です。

さらに、UPFをローカルに搭載するなどして、U-planeはブレークアウトするPrivate 5G的な構成も発展形として提案されています(NC-AP)

RWS-230252:NTT docomo

ちなみに、こちらに関連したものとして、SA2#157(2023/5)でもHome gNB with LocalGWという寄書が出されていました。CAGを用いることについても触れられており、NPN関連の技術も活用されそうな雰囲気があります。
NPN/CAGについては、Private 5G動向 ~2023春~ - omusubi techblog でも紹介しています。

 

S2-2306832:NTT docomo
Rate Splitting Multiple Access

次に期待されている多元接続といえばNOMAが有名ですが、RSMAは個人的に初見でした。NOMAと同じく基地局から干渉前提で出力された電波を、端末側で干渉を一部除去して復元するようなイメージのようです。

超大作の解説動画がありました。

Tutorial on Rate-Splitting (Multiple Access) for 6G - YouTube

 

RWS-230414:Viavi solutions