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3GPP TS23.501 5.15 Network Slicing を読んでいく

この記事は 3GPP TS23.501(V17.6.0)を読んでいく Advent Calendar 2022

の22日目の記事として執筆したものです。
その他の記事はQiitaのアドベントカレンダーページからどうぞ!

Calendar for 3GPP TS23.501(V17.6.0)を読んでいく | Advent Calendar 2022 - Qiita

 

はじめに

今回は、今をときめくネットワークスライシングについて、3GPPアーキテクチャとしてはどのように標準化されているか、Rel-17で追加された部分を中心に読み解いていきます。QoSに関わる観点も多いので、下記の1日目の記事も併せて見ていただくと、より理解が深まるかと思います。

omusubi5g.hatenablog.com

また、今回も例のごとく訳文を中心とした記事となるため、中々理解しがたい部分もあるかと思います。

そこで、最終日である12/25には5.7 QoS modelと5.15 Network Slicingを併せた応用編として、より噛み砕いた解説ができればと考えていますので、そちらも併せてご覧ください!

 

 

サマリ

本記事では、本文を日本語訳しつつ重要な箇所をハイライト・解説していきますが、かなりの分量なので、以下のサマリを読むだけでもOKです。

また、下記の解説記事も参考になります。

3GPP Release 17における5GCの高度化技術概要─システムアーキテクチャ | NTT技術ジャーナル

 

  • ネットワークスライシングといえば、S-NSSAI(スライシング識別子)の出番
    • S-NSSAI=SST(サービスタイプ)+SD(SST内での識別子) から構成される
      • SSTは1~5まで標準化済。ただし、必ずしも従う必要はない
      • SDはSSTの中で更にグルーピングを行いたいときに利用する
    • 1つのPDUセッションには、1つのS-NSSAIが紐づく
      • DNNが同一で、S-NSSAIが異なる複数のPDU SessionはOK
      • DNNが別で、S-NSSAIが同じ複数のPDU SessionもOK
  • スライシング識別子を用いて、スライス毎に可能な嬉しいこと
    • 認証 NSSAA (Network Slice-Specific Authentication and Authorization)
    • 受付制御 NSAC (Network Slice Admission Control )
    • 同時利用スライス数制御 NSSRG (Network Slice Simultaneous Registration Group)
    • レート制御 UE-Slice MBR
  • S-NSSAIの集合体がNSSAI。いろんなNSSAIがある
    • Configured NSSAI:UEに予め設定しておくNSSAI
    • Requested NSSAI:UEがRegistration時にAMFに要求するNSSAI
    • Allowed NSSAI:AMFがサービス提供するNSSAI
    • Rejected NSSAI:AMFがサービスを許可しないNSSAI
  • NSSAIとはまた別に、NSAGなるS-NSSAIの集合体がある
    • セル・TA毎に対応するS-NSSAIが異なっている場合に、UEとgNB間での
      S-NSSAI情報のやりとりを簡素化&隠蔽するため
      • 主にRAN Slicing検討の中で必要性が議論された結果導入された

5.15 Network Slicing

5.15.1 概要


ネットワーク スライスは、サポートされる機能とネットワーク機能の最適化によって異なる場合があります。その場合、そのようなネットワーク スライスには、たとえば、異なるスライス/サービス タイプを持つ異なる S-NSSAI が含まれる場合があります 。

 

オペレーターは、まったく同じ機能を提供する複数のネットワーク スライスを展開でき、異なるUE のグループを形成することが出来ます。たとえば、UE ごとにサービスを提供したり、顧客ごとに、スライス/サービス タイプが同じであるが、スライスの差別化を行うことが出来ます。

※S-NSSAI=SST(サービスタイプ)、SD(SST内での識別子)から構成され、

ひとつのサービスタイプの中でも、SDを用いてさらにグルーピングが可能になります。

5.15.2でも詳細が述べられています。


PDU セッションは PLMN ごとに、単一の特定のネットワーク スライス のみに属します。

異なるネットワークスライスはPDU セッションを共有しませんが、異なるネットワーク スライスは同じ DNN を使用して、スライス固有の PDU セッションを持つ場合があります。

NSSAA (Network Slice-Specific Authentication and Authorization)はネットワーク スライス固有の認証を可能にします。
NSAC (Network Slice Admission Control ) は、ネットワーク スライスごとの登録済み UE の数とネットワーク スライスごとの PDU セッションの数を制御します。

NSSRG (Network Slice Simultaneous Registration Group)は、UE が同時に登録できるネットワーク スライスを制御できるようにします。
UE のネットワーク スライスごとのデータ レート制限のサポートにより、ネットワーク スライスごとの最大ビット レートの実施が可能になります

※UE-Slice-MBRのこと。5.7 QoS modelでも出てきました

 

5.15.2    Identification and selection of a Network Slice: the S-NSSAI and the NSSAI

S-NSSAI は、ネットワーク スライスを識別します。
S-NSSAI は次の要素で構成されます。
- 機能とサービスに関して想定されるネットワーク スライスの動作を指すスライス/サービス タイプ (SST)。


- 同じスライス/サービス タイプの複数のネットワーク スライスを区別するために、スライス/サービス タイプを補完するオプションの情報であるスライス識別子(SD)

 

S-NSSAI は、標準値 または非標準値を持ち、非標準値を持つ S-NSSAI は、S-NSSAI が関連付けられている PLMN 以外では、 UE によって使用されないものとします。
URSP ルールの NSSP (Network Slice Selection Policy)の S-NSSAI には、HPLMN S-NSSAI 値のみが含まれます。

PDU Session Establishment内の S-NSSAI には、1 つの Serving PLMN S-NSSAI 値が含まれます。
NSSAIは、S-NSSAI の集まりです。 NSSAI は、Allowed NSSAI、Requested NSSAI、 Configured NSSAI のいずれかです。

UE とネットワーク間のシグナリング メッセージで送信されるNSSAI には、最大で 8 つの S-NSSAI が存在する可能です

UE によってネットワークにシグナリングされた Requested NSSAI により、ネットワークは、この UE に対するAMF、ネットワーク スライスを選択できます。
オペレーターの運用または展開のニーズに基づいて、ネットワーク スライス を 1 つ以上の S-NSSAI に関連付けることができ、同じ S-NSSAI に関連付けられた複数のネットワーク スライス は、同じトラッキング エリアまたは異なるトラッキング エリアに展開できます。

同じ S-NSSAI に関連付けられた複数のネットワーク スライスが同じトラッキング エリアに展開される場合、UE にサービスを提供する AMF は、この S-NSSAI に関連付けられた複数のネットワーク スライス に論理的に属する (つまり、共通である) 場合があります。


Requested NSSAIとサブスクリプション情報に基づいて、5GC はこのネットワーク スライスに対応する 5GC コントロール プレーンおよびユーザープレーン ネットワーク機能を含む、UE にサービスを提供するネットワーク スライスの選択を担当します。サブスクリプション情報には、ネットワーク スライスの同時登録に対する制限が
含まれている場合があります。これは、ネットワーク スライス同時登録グループ (NSSRG) 情報の形式で、UE サブスクリプションの一部としてAMF に提供されます。

RANは、5GCがRANにAllowed NSSAIを通知する前に、シグナリングでRequested NSSAI を使用して、UE コントロール プレーン接続を処理することができます。 Requested NSSAI は、AMF 選択のために RAN によって使用されます。

5.15.2.2 Standardised SST values


標準化された SST 値は、スライスのグローバルな相互運用性を確立する方法を提供します。

標準化されたSST

※従来はeMBB,URLLC,MIoTの3つを言及することが多かったですが、最新ではV2XとHMTCが新たに追加されています

 

注 1: PLMN では、すべての標準化された SST 値のサポートは必要ありません。各 SST 値についてこの表に示されているサービスは、他の SST によってもサポートできます。
注 2: GSMA 定義のネットワーク スライス タイプ (NEST) から標準 SST 値へのマッピングは、GSMA NG.116で定義されています。

https://www.gsma.com/newsroom/wp-content/uploads//NG.116-v7.0.pdf

SST=2 URLLCはNESTだとこんな感じ

 

5.15.13    Support of data rate limitation per Network Slice for a UE(UE-Slice-MBR)

UE サブスクリプション情報には、Subscribed UE-Slice-MBRが含まれる場合があり、これは3GPPアクセスタイプのみに適用されます。

Subscribed UE-Slice-MBR には、UL 値と DL 値が含まれます。 Subscribed UE-Slice-MBRサブスクリプション情報で S-NSSAI に関連付けられている場合、AMF が UE へAllowed NSSAI を UE-Slice-MBR QoS パラメータとして RAN に提供するときに併せて提供されます。

UE の Subscribed UE-Slice-MBR が変更された場合、AMF はそれに応じて RAN 内の UE-Slice-MBR を更新します。

PCFは、UE のネットワーク スライスごとのデータ レートを監視し、それに応じて個々の PDU セッションまたは PCC ルールのトラフィック制限を強化または緩和するように構成できます。

 

5.15.14    Network Slice AS Groups support 

RAN は、NetworkSlice AS Group (NSAG) をサポートします。

NSAGは、関連付けられているネットワーク スライスのグループ識別子です。

NSAGが導入された経緯については、下記を読むと少し理解できます。

Summary for WI Enhancement of RAN slicing for NR

https://www.3gpp.org/ftp/Meetings_3GPP_SYNC/RAN/Docs/RP-221376.zip

 

上記では、

『セキュリティとオーバーヘッドの理由からUE~gNB間(Uu)でS-NSSAIを公開しないようにするため』

NSAGを導入する、とされています。

具体的には、下図のようなセルやトラッキングエリアが構成されている場合、今まで述べてきたようなS-NSSAIをそれぞれに関連付けると、かなり煩雑になることが予想されます。

NSAGをつかなわない場合。セルごとにサポートする-NSSAIを報知する
S2-2203920 Discussion on Slice list and priority information for cell reselection

そこで、TA-3のNSAG=5 (S-NSSAI=1,S-NSSAI=4,S-NSSAI=5)のようにOAM設定を行い、S-NSSAIではなく、NSAGを報知することで、S-NSSAIのオーバーヘッドを低減しつつ、隠蔽可能であるとしています。

 

S-NSSAI は、ランダムアクセスの最大 1 つの NSAG 値と、トラッキング エリア内のセル再選択の最大 1 つの NSAG 値に関連付けることができます。 S-NSSAIは、異なるトラッキングエリアの異なる NSAG 値に関連付けることができます。


RAN は、NGSetupおよび RANConfigurationUpdateを使用して、トラッキングエリアで S-NSSAI が関連付けられている NSAG の値を AMF に提供 (および更新) します。

PLMN 対して一度に UE に設定できる NSAG は最大 32です。

NSAG 情報は、電源オフ後または UE が Deregistered になった場合に消去されます。