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TR38.821 Solutions for NR to support NTNを読む (8.1章~8.2章)

 

この記事は、TR38.821 Solutions for NR to support NTNの「8.1 Tracking area management」及び「8.2 Registration Update and Paging Handling」を読んだ際のメモです。主に、TA(TrackingArea)とRA(RegistrationArea)のNTNにおける考え方が検討されています。

 

本章で登場する各シナリオは下記の6つである。

検討シナリオ

8.1 Tracking area management

Registration、TrackingAreaのコンセプトは、地上ネットワークに関連するものであり、以下の点でNRのセルラーシステムと同様である。


● トラッキングエリア(TA)は、一定の地理的な範囲に対応する。
● TAは、UEアクセス制御、位置登録、ページング、モビリティ管理などに利用され
る。
● RegistrationArea(RA)は、1つまたは複数のTAを包含する。目的は、ページングに使用する無線リソースを最小化するために、UEを追跡することである。

8.1.1 NTN cells are fixed w.r.t the ground(地面に対してNTNセル固定)

シナリオ A、B、C1、D1 では、NTN セルは地表に固定されている。

従って、TAは1つまたは複数のNTNセルに対応することができる。3GPPで定義されたTA管理とページング手順がそのまま適用される。C1およびD1の場合、LEO衛星は一時的に地上に固定されたフットプリントを持つビームを生成する。言い換えれば、ビームフットプリントは、ある時間、地上の所定のNTNセル上に固定され、その後、別のNTN
ル上にフォーカスエリアを変更し、各NTNセルをTAに割り当てることが可能である。

この場合衛星は、2つの連続したNTNセルがカバーされる間に報知されるTACを変更する必要がある。


注1:シナリオCの場合、TAリストおよびページングメッセージは、同じgNBによって、このNTNセルをカバーするすべての衛星を介してNTNセルに送信される可能性がある

注2:シナリオD1の場合、TAリストとページングメッセージは、このNTNセルをカバーするすべての衛星に搭載されたgNBによって送信される可能性がある

 

8.1.2 NTN cells are moving w.r.t the ground(地面に対してNTNセルが移動)

シナリオC2とD2では、衛星が軌道面上を移動するのに合わせてNTNセルも地上を移動する。このため、TA管理およびページング手順にいくつかの適応が必要である。


IDLE/INACTIVE モビリティのシナリオC2、D2に着目すると、TAが常に関連するセルと一意に組み合わさっている限り、移動するTAであっても、従来のコアネットワーク手
順(例えば、ページング)を適用することが可能である。

しかし、そのような場合、TAを固定及び非NTNと区別することが有益である。

これはNTN移動セルに関連するTAのための識別子範囲を、予め確保することによって行うことができる。しかし、これは可能なTAアドレス空間を制限するかもしれず、オペレータの観点からは好ましくないかもしれない。

別の代替案としては、NGAPおよびXnAP上でシグナリングされたTAC IEを、例えばENUMERATED(NTNNTN with moving cells、...)として定義されたTAタイプIEで拡張し、受信ノードがこのTAに関連するセルがNTNに関連しており、地面に対して静止していないことを識別できるようにすることが考えられる。あるいは、セルレベルまたはgNBレベルであってもよい。

 

地上波と非地上波のネットワークには、同じまたは異なる PLMN を割り当てることができる。


● 地上系と非地上系が 異なる PLMN の場合、両方のTAのレイアウトを独立して定義し、あるレイアウトのTA間での重複を防ぐことが可能である。これは、現在の TA の定義と一致する。

● 共有 PLMN の場合、オペレータはTAを定義し、地上ネットワークが使用するTAI と非 地上ネットワークが使用する TAI を割り当てる。これらのTA間のオーバーラップは可能である。

主なアイデアは、TA管理をNTNセルパターンから切り離すことである。その場合、RAおよびTAは、オペレータによって定義された任意の地理的領域となる。
また、すべてのUEが測位可能なわけではないことを想定している。

 

以下は、シナリオ C2 および D2 に適用される。 

8.1.2.1 Tracking Area defined on satellite

このオプションでは、NTNセルはPLMN IDごとに1つのTAIのみを持ち、地上セルと同じである。これはまた、gNBが現行のNGAPのinitial UEメッセージにサービングセルの1つのTAIを含まれていることが利用可能である、


シナリオC2およびD2では、LEO衛星が移動すると、TAIのカバー範囲も変化する。静止しているUEは、TAIが変化し続けるのを観測する。これに関するいくつかの解決策は8.3章Mobilityで検討する。

8.1.2.2 Tracking Area defined on earth

このオプションでは、TAIが特定の地理的地域に関連するという原則は維持されるが、NTNセルはPLMNごとに複数のTAIをブロードキャストしなければならない場合があり、セルがPLMN IDごとに1つのTAIのみを持つという原則と一致しない場合がある。
NTNセルが複数のTAをカバーする場合、NTNセルは関連する全てのTAIをブロードキャストする。
UEの観点では、UEは報知されたTAIによってTAを認識する。UEによって観測されるTAは常に変化するため、以下の点をさらに考慮する必要がある。


●NGインタフェースでCNに提供されるのはどのTAIか?
InitialUEメッセージの手順中に、UE の位置、すなわち TAI+CGI が CN に提供される。NTNセルが複数のTAIをブロードキャストする場合、1つのオプションは、AMFにすべて
のTAIを提供することである。AMFは、UEに有効なRAを提供することが困難な場合がある。

もう1つのオプションは、AMFに1つのTAIのみを提供することである。NTNセルが複数のTAIをブロードキャストした場合、gNBは、AMFに提供するTAIを決定する必要がある。


●地域/国のポリシーを実施するには?
Registration手順の間(またはその前)に UE の位置が特定できる場合、NG-RAN ノードはregistration中に UE の位置をネットワークに提供し、地域/国別ポリシーが適用される。そうでない場合は、UE がCONNECTEDモードに入るとすぐに、ネットワークが UE の位置を特定できるようになり、地域 / 国別ポリシーが適用される。

8.2 Registration Update and Paging Handling

非地上系かつ非GEOネットワークでは、衛星は対象地域を移動し、そのアンテナビームは対象地域のさまざまな部分をカバーする。
地球上を移動するフットプリントを持つNTNビームでは、非GEO NTNビームとTAIとの固定的な関連付けは、地上で移動するTAIにつながる。地上系ネットワークでは、UEを追跡するための地理的な領域は、TAとも呼ばれ、RANからブロードキャストされるTAIに関連付けられる。

地上系ネットワークと同様に、移動するNTNビームと地球上のジオエリアとの間に一対一の対応ははない。
すなわち、非GEO衛星によって報知されるTAIは地球上を掃引します。静止しているUEは、時間経過とともに異なるNTNビーム/TAIを見ることになる。現在のRegistrationUpdate手順では、静止するUEはNTNビームが変わるとRegistrationUpdateを実行し続けなければならない。これは、現在のRegistrationUpdateとページングに課題をもたらす。

以下では、UEが自分の位置を決定できるかどうかに基づいて、可能な解決策を検討する。

8.2.1 Option 1: UE is capable to determine its location 

以下では、UEがGNSSなどによってその位置を決定する能力を有していることを前提としている。この場合、衛星はUEの位置情報に基づいてUEをページングすることができる。
地上系ネットワークでは、AMFはUEが位置するTAをマッピングして、UEをページングするgNBのリストを決定する役割を担う。NTNでは、UEの位置を使用して同等のマッピングを行い、UEをページングするgNBのリストを決定することができる。
マッピングは、AMFで行うことができ、AMFは、UEタイプやUE速度情報などのいくつかのアシスト情報とともに、UEの位置を認識する。AMFは、衛星エフェメリスも認識する必要がある。あるいは、このマッピングはRAN内で行うこともできる。

UEにページングする必要がある場合、AMFは、通常通りTAIからページングメッセージを送信するRANアクセスノードを決定する。NTNベースのNG-RANは、UEの最後の位置情報と衛星のエフェメリスから、ページングをブロードキャストする衛星ビームを選択することができる。

しかし、これはRANとCN間のページング失敗時やとUEがIDLE時のコンテクスト管理などいくつかの検討しなければならない課題を有する。

 

8.2.1.1 Mapping of UE location to gNB list in the AMF

UEロケーションベースのページング手順例は、以下の図の通りである。

UEロケーションベースのpaging例

● ステップ1:
UEはgNB1に位置情報を通知する。この報告には、UEのタイプ、速度情報などのアシスタンス情報も含まれることがあるが、詳細はさらに検討する必要がある。
● ステップ2:

UEロケーション・レポートを受信すると、gNB1はロケーション情報およびアシスタンス情報(必要な場合)をAMFに転送する
● ステップ 3:

AMF は UE の位置情報、アシスタンス情報および対応するタイムスタンプを保存する。この情報は、UE がIDLE状態になったときに AMF に保存される。
● ステップ 4: 
AMFがUEをページングする場合、保存されている情報とエフェメリスに基づいて、UEの位置をカバーできるgNBを選択する。
● ステップ5:

AMFは、位置情報およびアシスタンス情報を含むPagingメッセージを、選択されたgNBに送信する。gNBは、Pagingメッセージを受信すると、ページングする衛星またはビームを決定し、それに応じてUEをページングする。

 

注:ロケーションベースのページングが失敗した場合、AMFはページングエリアを拡張し、ページングポリシーに従ってUEへ再送信することができる

(例:UEの登録エリア全体でページングを再送信する)

8.2.2 Option 2: UE is not capable to determine its location

以下では、UEがその位置を決定する能力を持たないことを想定する。

8.2.2.1 Solution 1: Timing window based Registration update and paging

この解決策では、地上の識別子が移動することを前提としている。

衛星は RA に基づいて UE をページング可能である。
このオプションでは、TAはジオエリアに関連する有効時間のタイミング情報と関連付けられている。

例えば、あるジオエリアに対して、NTNビーム#1とTAC#1が10:01~10:10の間、NTNビーム#2とTAC#2が10:11~10:20の間、サービスを提供することになる。

UE Registration手順の例

● ステップ 1:

10:05 に、UE は登録手順を開始。REGISTRATION REQUESTメッセージがAMFに送信される。通常のinitial accessと同様に、CU は TAC#1 を現在の NGAP 手順で AMF に提供する。
● ステップ 2:

AMF は REGISTRATION ACCEPT メッセージで返信する。AMF は、UE のロケーションが 10:01 ~ 10:10 の間は TAC#1、10:11 ~ 10:20 の間は TAC#2 によってカバーされる、と判断する。この決定は、以下に基づいて行われる。

- 衛星のエフェメリス情報、つまりどのNTNビームが特定の場所をカバーしているかという情報
- UE の現在または最後の 3GPP アクセスの TAC/NTN ビーム ID に基づく UE の位置情報。UE は、NAS REGISTRATION REQUEST メッセージまたはその他の NAS メッセージに位置情報を含めることができる。

判定は、データベースへの問い合わせにより行うことができる。
REGISTRATION ACCEPTメッセージには、タイミング情報(この例では、AMFはUEが10分後にRegistrationUpdateを開始することを希望している)とTAIのリストで構成される拡張登録エリア情報が含まれている。
+ TAC#1 with (10:05 - 10:10)
+ TAC#2 with (10:11 - 10:15)
その後、UE は RRC_IDLE に入る。

 

ケース0:10:05~10:11にUEが移動しなかった場合
● 10:11、NTNビーム#1がUEのエリアから外れる。UEのエリアは、NTNビーム#2がTAC#2を用いてカバーするようになった。UEは、サービングセルのTACがTAC#2に変更されたことを検出。UE は TAC#2 をステップ 2 で受信した拡張RAと照合する。

TAC#2 はAMF が REGISTRATION ACCEPT メッセージ(ステップ 2)で割り当てた RA内にあり、タイミング情報も一致しているため(つまり、TAC#2 は 10:11-10:15 のみ)、UE はまだRA 内にある。したがって Registration Update を実行する必要はないことを意味する

ケース1:10時12分に、UEがページングされる。
● ステップ 3:10:12 に、UE の DL データを受信する。AMFは、UEの最後の位置(すなわち、10時05分のTAC#1)と、このエリアのTA情報(すなわち、10時01分から10時10分のTAC#1、および10時11分から10時20分のTAC#2)に基づいて、ターゲットTAを決定する。この例では、AMFはUEの最後の位置を知っており、10時11分から10時20分の間、TAC#2でNTN beam#2によってサービスを受けることになる。AMFはTAC#2付きのPagingメッセージをNG-RANに送信し、通常のサービスリクエストの手順が実行される。


ケース2:10時13分、UEがRA外に移動した場合
● ステップ 4(図 8.2.2-1 参照):10:13 に、UE は現在の NTN ビーム放送 TAC#1 
を検出する。TAC#1 は AMF が REGISTRATION ACCEPT メッセージ(ステップ
2)で割り当てたRA内にあるが、タイミング情報が一致しない(つまり、TAC#1 は 10:01 ~ 10:10 のみで 10:13 はない)ため、これは UE が現在のRAから移動していることを意味する。そのため、UE は Registration Update 手続きを開始する。

このオプションの利点は、下記である。
● 現在のRegistrationUpdateトリガー、すなわちTS23.501の"サービングセルの現在のTAIがUEがネットワークから受け取ったTAIのリストにない場合はMobilityRegistrationUpdate手順を実施する"を再利用可能
NTNビームが常に同じTACをブロードキャストする、現在のTACブロードキャスト機構を再利用する。
● RANとCNへの変更が少ない。

 

8.2.2.2 Solution 2: UE assisted TA list report/registration and paging

この解決策は、地上の静止した識別子を想定していえう。衛星は、RAすなわちTAIリストに基づいてUEをページングする。
このオプションでは、TAIは地上の固定されたTA計画エリアに基づいて、NTNセルのSIBでブロードキャストされる。

ステップ1:地表に固定されたTAマップをセットアップする。
ステップ2:衛星の位置に応じてブロードキャストTAIを動的に更新する。
ステップ 3: UE は、RegistrationUpdateのために受信したブロードキャスト TAI のリストをモニタし、通知する。
ステップ4:RegistrationUpdate中に、AMFはUEにTAIリストを提供し、これはページングに使用されるUE固有のRAを定義する。
ステップ5:UEは、観測された最良のセルTAIリストを記録する。
ステップ6:UEは、AMFから割り当てられたTAIリストとステップ5からの観測TAIを比較し、まだRA内かどうかを判断する
ステップ7:UEがRAを離れたと判断した場合、UEはRegistrationUpdateを開始し、観測されたTAIリストをAMFに報告し、AMFが新しいUE固有のTAIリストを割り当てることができる。

 

8.2.2.3 Solution 3: Multi-Tracking Area ID based Registration update and paging

衛星は、単一のTAIをブロードキャストする代わりに、TAを衛星ビームカバレッジエリアのサブセットとすることを可能にするために、カバーされたTAのTAIリストをブロードキャストすることができる。そして、衛星は、そのビームカバレッジエリアに関して、TAIのリストを採用することができる。

透過型衛星の場合、地上のgNBは、使用されるべきTAIのリストを予め設定することができる。

再生衛星の場合、衛星上のネットワークノードは、例えば、8.3.2.1で説明したのと同様の方法で、各TAIリストのエントリに対して有効な時間枠を使用することによって、使用するTAIのリストを事前に設定することができる。
この方法の利点は、地上の非重複領域としてのTAの定義が有効であり、現在のページング機構を再利用できることである。


下図 にTAに相当する国での例を示す。4つのTAが定義されている。

TA1: ドイツ

TA2: オーストリア

TA3: スイス

TA4 リヒテンシュタイン

(国ごとに複数の TA を定義することも可能であることに注意)。

赤、緑、青の3つの衛星が、赤ビーム、緑ビーム、青ビームで示されたエリアの一部をカバーしている。上図では、赤の衛星はビームフットプリントがTA2、TA3、TA4をカバーしているため、TAI2、TAI3、TAI4の3つのTAIをブロードキャストしていることになる。
同様に、緑の衛星はTAI1とTAI3を、青の衛星はTAI1、TAI2、TAI3、TAI4をブロードキャストしている。図の下部は、同じTAでも、衛星とそれぞれのカバーエリアが移動したものである。

したがって、赤と緑の衛星がブロードキャストするTAIのリストは変わったが、青の衛星は同じままである。
この例では、オーストリアに位置するUE(TAI2)は、図の上部では、青と赤の両方の衛星ビーム内でページングされることになる。図の下部では、青と緑の両方の衛星ビーム内でページングされる。

国土をTA単位とする例
8.2.2.4 Solution 4: UE location determined by NTN based NG-RAN

衛星ビームのアースフットプリントは、衛星高度と仰角に依存するが、通常の地上セルサイズと比較するとかなり大きくなる可能性がある。したがって、TAサイズとRegistrationUpdateのトレードオフは、地上系ネットワークと比較してNTNでは異なる。

UEがInitialRegistration、RegistrationUpdate、またはCONNCTEDモードに切り替わったとき、NTNベースのNG-RANは、例えば、ビーム識別子からUEロケーション情報を取得する。IDLEモードの UEを追跡するには、RAの定期的な更新で十分であり、RA の更新周期は UE のタイプまたは観測されたモビリティ動作に従って調整される。
さらに、RAN は UE の位置を特定するための他の手段を持つことができる。
したがって、UEが自分で位置を決定する能力がない場合でも、RANがUEの位置に関する情報を有すると仮定することができる。そして、UEロケーションに基づくページング方法を適用することができる。