omusubi techblog

This website is my technical memo (Mobile/Wireless)

5Gの物理層まとめ② ~端末の電源ONからセルサーチ~

この記事は、5Gにおける端末の電源ON~セルサーチの流れをまとめたものです。

筆者の勘違い等が含まれている可能性もありますので、あいまいな点はぜひご指摘願います。

 

おすすめ参考資料:
①TelecomhallのMohamed ELAdawi先生の記事

https://www.telecomhall.net/u/mohamedeladawi/activity/topics

②ドコモ先生の解説記事

5GにおけるNR物理レイヤ仕様 | 企業情報 | NTTドコモ

はじめに

大まかな流れは下記となります。

基地局が報知情報(SSB)を定期的に発信する

②端末の電源を入れると、SSBをスキャンし始める(セルサーチ)

③受信したPSSとSSSからPCI(セルID)を取得する

④PBCHからMIBを取得し、SIB1を受信するための情報を得る

⑤SIB1をもとに、RACH手順を開始する ←ここでようやく端末から電波を発する

端末の電源ON~セルサーチの流れ
https://www.telecomhall.net/t/5g-call-flow-diagram/7466/2




基地局の報知情報(SS/PBCH Block : 通称SSB)

基地局から常に出てます

5Gの物理層まとめ① ~フレーム構成とリソースブロックとSSB~ - omusubi techblog

前回の記事でも少し触れましたが、基地局は報知情報と呼ばれる、その基地局に関する情報を定期的に発信しています。この報知情報のかたまりをSS/PBCH Block、通称SSBと呼びます。

 

SSBの周期は、5/10/20/40/80/160msのいずれかの範囲で、基地局ごとに設定可能かつ、ビームごとに異なるSSBを設定できるため、複数のSSBを送信することもできます。この複数のSSBをまとめて、SSバーストと呼んだりもします。

 

また、前回の記事でSSBは帯域幅のどの位置にも柔軟に設定可能であると記載しましたが、厳密には、同期ラスタ:GSCN(Global Synchronization Raster Channel)という粒度の範囲内で設定することができます。

LTEまでは、ラスタというのはキャリアの中心周波数を設定可能な粒度として用いられていましたが、5Gでは2つのラスタが登場します。

1つは、LTEまでと同様に、使用する帯域の中心周波数を設定する粒度としてのチャネルラスタです。ただし、LTEは100kHz単位のみでしたが、5Gでは15/60kHz単位となりました

チャネルラスタの変化

https://www.soumu.go.jp/main_content/000680139.pdf

そして、もう一つ新たに登場したのが同期ラスタです。こちらは、SSBを設定する粒度で、Sub6帯では1.44MHz単位、mmW帯では17.28MHz単位となります。

新たにラスタが導入された一番の理由としては、5Gでは広い帯域幅を使用することから、従来のチャネルラスタの粒度で報知情報をサーチしていては、非常に時間がかかってしまうため、より大きな粒度でSSBを設定することで、セルサーチの時間短縮が図られています。イメージとしては下記です。

チャネルラスタと同期ラスタのイメージ

あるバンド(例えばn79の100MHz)で、中心周波数を設定可能な位置は15kHz単位のチャネルラスタ位置のため、100MHzもあると膨大な数になり(青の線)、それをすべて確認していくとかなりの時間を要します。これに対し、同期ラスタは1.44MHz単位で設定するため、かなり粒度は荒くなり(赤の線)、確認対象の周波数を大幅に削減可能となります。

ということで、5Gでは、免許に申請されている中心周波数と、報知情報であるSSBが発信されている周波数位置は、往々にして異なります。

 

②端末の電源ON!

いろんな基地局やビームのSSBが飛んでる

端末の電源をONにすると、①で見たSSBをスキャン(セルサーチ)し始めます。

この時の粒度が、同期ラスタとなります。

PSSとSSSからPCIを取得する

プライマリ同期信号:PSSセカンダリ同期信号:SSSはそれぞれ

  • PSS:0~2の3つの値
  • SSS:0~335の336個の値

を持ち、PCIは下記のように計算されます。

  • PCI:3×SSS+PSS →0~1007の値

したがって、PCIは1008通り存在します(LTEでは504でした)

PCIをもとに、PBCHの復調用信号であるDMRSのSSB内の位置を求めることができ、

つぎにPBCHを復調していきます。

PCIでPBCH DMRSの場所が決まる

http://howltestuffworks.blogspot.com/2019/10/5g-nr-synchronization-signalpbch-block.html

④PBCHからMIBを取得し、SIB1を受信するための情報を得る

MIBの中身

MIBの中の下記情報からSIB1を受信するための情報を取得します。

具体的にはpdcch-configSIB1が該当します。SIB1はPDSCH(データ転送の物理チャネル)で送られるのですが、そのSIB1の送信をスケジューリングするためのPDCCH(制御データ転送の物理チャネル)情報を格納しています。
MIBからSIB1導出までの流れは複雑すぎてまだ理解が追い付ていないので下記を参照するとよさそうです。。。理解できたら追記します。

https://www.linkedin.com/pulse/5g-nr-controlresourcesetzero-corseset0-search-space-zero-chelikani

 

その他MIBには、サブキャリア間隔や、リソースグリッドがどこから始まるかをUEに通知するオフセット値、PDSCHのDMRS位置などが含まれており、80ms周期で送信されています。

 

⑤SIB1をもとに、RACH手順を開始する(端末から電波を発する)

SIB1には下記のような情報が含まれています。

  • セル情報:PLMN(ドコモは440-10とか),TACなど
  • セル選択情報:接続するために最低限必要な受信レベル(RSRP)など
  • 他のSIBスケジューリング情報
  • RACHパラメータに関する情報
  • 端末に通知する各種タイマー値

これらをもとに、ようやく端末が電波を発出し、基地局に対して接続を試みるRACH手順を行えるようになります。RACH手順までは、5GCは関係しないので、基本的には端末と基地局間でのみ完結します。つまり、initial registrationなどの5GCとのやりとりはまだまだ先の話となります。